CARVAAN Gran Chef
横山真治

Q.【入社経歴・動機】

辻エコールキュリネール国立フランス料理専門学校及び、フランスリヨン校を卒業後、1988年リヨン近郊の2つ星レストラン「ラ・ピラミッド」のパトリック・アンリルーシェフに師事。

2004年成城「オーベルジュ・ド・スズキ」の鈴木喜代司シェフに師事。

2008年「六本木ヒルズクラブ」のステファン・フーシエシェフに師事し、2009年コンテンポラリー・フレンチレストラン「BREEZE OF TOKYO」シェフに就任。

2012年モダン・スカンジナビアン・キュイジーヌ「AQUAVIT」東京店エグゼクティブシェフを経て、2020年CARVAANグランシェフに就任。

元々料理が好きで、その中でも取り分けフランスの食文化に興味があり、フランスと日本を行き来しながら20年間フレンチに従事してきました。

その経験を活かして、まだ日本で北欧文化が珍しい頃、フレンチのガストロノミーと同じように北欧の特徴ある食材を使ったスカンジナビア料理のレストランのシェフも務めました。まだ日本に馴染みがない食文化を、フレンチと融合させながら魅力的かつ親しみやすく表現するのは容易なことではありませんでした。

ホテルから街のレストランから様々な場所で経験を積みましたが、自分で直々に市場で食材を選べ、喜ぶお客様の顔がより近くに見える距離感で料理を作ることに面白さを感じていました。

そのような中でCARVAAN BREWERY & RESTAURANTがオープンした際、メニューやオペレーション改善などを行うためにキッチンの監修に入ることになりました。その時、僕は自分のレストランを持っていたのであくまで外部から監修に入る、という形での関わり方でした。その後、仕事で暫くジャカルタへ渡り、帰国後も数カ所のレストランでシェフを務めながら、月数回の休日は全てCARVAANへ行っていましたね。

コロナ禍で自分の働いているレストランを一区切り付けることになり、さて次はどうするかと考えた時に、折角やるのであれば次は人生を懸けて、骨を埋める覚悟で新しいことに挑戦したいと思っていました。長い事生きてきたフレンチの世界でこのまま生き続けるかどうか、それはもう悩みましたよ。 それでもフレンチのクラシックなスタイル、ヨーロッパの料理は20年間の間に一通りやりきったという想いがあり、あとは残すのはアラビア料理のみ。この状況下だからこそ、一からまっさらな気持ちで自分が知らない世界の料理に挑戦してみたい、やったことないことをやりたい、出来ない出来ないと今まで謂われてきたことをやってみたいという想いは強くなりました。

海外にも進出したいという社長のビジョンに賛同し、僕もそれに挑戦したいと思うに至りました。こうして、晴れてCARVAANのグランシェフに正式に就任する運びとなりました。

Q.【仕事内容、働き方】

A. 世界の食文化の原点「アラビア料理」とフレンチの融合で唯一無二の食体験を

CARVAAN三店舗の立地の特性やお客様の利用シーンに合わせたメニューの改訂、前菜からメイン、デザートに至るまでの新しいメニュー開発、コース提案、新事業であるデリカテッセンの開発、オペレーション改善、スケジュール管理、衛生管理など、総合的に店舗の再ブランディングに現在取り組んでいる最中です。

既存のアラビア料理の枠を超えて、今までの僕の経験を活かした新しい提案が出来ればと思っています。

CARVAAN BREWERY & RESTAURANTの3周年記念コースでは、どのようなお客様にも美味しく愉しんで頂けるようにフレンチとアラビアンの要素を7:3で融合させたメニュー構成でご提供しました。「接客も料理も雰囲気も格段に良くなったね」とオープニング時からお越しいただいているお客様に言っていただいて嬉しかったですね。

僕にとっても初めてのアラビア料理ですが、移民が多く住むフランスではスパイスは無くてはならないもの。フムスやファラフェル、クミン、カルダモンなど、スパイスの使い方はフレンチの世界でも大幅には変わらないんです。

違いといえば、フレンチにはワインに合わせる上で辛味という概念はあまり無いんですよ。それに比べて、アラビア料理は味を形で表すと「三角形」。熱い砂漠の地域を中心に発展した食文化は味に角がある。勿論、その気候と風土によく合うように発展した形ですが、日本人の感覚からすると日本のこの環境で料理を口にした時に美味しさを感じるのは「丸」なんですね。

日本食もフレンチも大切にしているのは、全ての味覚が丸く調和する形です。辛すぎてもしょっぱすぎても甘過ぎても駄目で、絶妙な旨みや深み、丸みが美味しさを感じさせる要素になる。僕が心掛けているのは、アラビア料理特有の角をとり、スパイスと食材の持つ本来の味わいを丸く融合させること。そこにフレンチの要素を取り入れています。

フレンチも元を辿れば、アラビア料理を源流として発展した料理。アラビア料理は謂わば世界の食文化の原点になった料理なんです。お客様には常に生きた体験と、共鳴を得られる料理を愉しんでいただきたいと思っています。

Q.【FAREASTとは?大変なことは?】

A. 情を注いで向き合った分だけ料理は美味しくなる

FAR EASTでは、此処に集う皆が企業のビジョンをしっかり伝えることが出来て、同じ方向を向いてどう動くかということが共有されている一体感のある会社ですね。

元々、FAR EASTに入社する以前からFAR EAST BAZAARは知っていて、よくドライフルーツを買いに行っていたんです。いつ誰が対応してくれても、元気にアグレッシブで、気持ちの良い接客に感心していました。CARVAANでも今以上に、食材に対しても建物や設備に対しても人に対しても、もっと愛情を込めて向き合い、皆がお互いを尊重し大切にしあう風土を高めていこうと取り組んでいるところです。良い感情を注いで作った料理は、やっぱり美味しいですから。

僕自身、現在努力していることは、アラビア料理に対する造詣を深めることですね。スパイスや調理法だけでなく、文化的なことや歴史的なことも含めて理解をすることが良い料理を作る上で大切だと思っています。

Q.【今後の目標は?】

A.ヴィーガン市場とハラール市場の開拓

アラビア料理の魅力は、多様なスパイスだけではなく、フルーツも野菜もハーブも沢山使う食文化であることです。地元食材をふんだんに使うことでこの土地のこともブランディングしながら、もっと色鮮やかで華やかなアラビアの世界を表現したいです。

日本ではまだそう多くないヴィーガンのコース開発や、ハラール市場の開拓にも積極的に取り組んでいるところです。身体には良いけれど美味しくなさそう、というイメージを払拭し、食の主義に関わらず、誰が食べても満足のいくものにしたいと思っています。

いかに美味しく出来るか楽しみですね。

アラビア料理とフレンチ、双方の良い部分を掛け合わせた料理を作ることは、レストラン業界の中でも新しい挑戦でしょうね。料理人として純粋に自分の仕事が楽しいです。僕はフレンチが得意ですが、CARVAANにはカレーやスパイス使いが得意なシェフも居ます。仲間と得意なものを活かしあいながら、お互いの技術や知識を合わせて他には無い料理を生み出し、お客様にとって新しい経験や価値の提供を出来たらと思います。

ディナーメニュー

取材/筆:阿部香澄