Abalkhail Consulting 川合麻由美氏

川合麻由美氏

アラビア世界との貿易を主眼とするFAR EASTの輸入事業において、現地とのコミュニケーションや貿易が滞りなく円滑に行えるように、日々現地で情報収集に奔走し、細部まで調整して下さっているのがAbalkhail Consulting社の川合さんです。

大学院卒業後、マーケティング調査会社に入社、B to C調査に携わり、その後エジプトにて政府系機関の専門家として知見を積んだ後、現地コンサル会社にて、国連や各国政府機関のコンサルティングを経験。

当時のカウンターパートと新規ビジネス参入のための市場調査や企業調査を行う会社を立ち上げたのち、Abalkhail Consulting社に役員として参加した川合さんは、FAR EAST代表の佐々木と共に、エジプト、レバノン、サウジアラビア、オマーン、バーレン、パレスチナ、ヨルダンとアラビア中を飛び周り、まさに身内とも謂えるビジネスパートナーとして、FAR EASTの新商品発掘と新規事業の開拓に尽力していただいています。

文化も言語も宗教も異なり、更には女性の活躍が容易ではないアラビア文化圏の中で、新しいビジネスを拓くための素地を地道に、そして精力的に築いて周る川合さん。貿易という一見華やかに見える世界の裏側では、緻密なデータの収集と、幅広い人脈を手繰り寄せる力、根気強いコミュニケーション能力が求められます。

高い調査力と、FAR EASTの理念を理解し、如何なる商談の場面でも私達の想いを曲げずに真っすぐに代弁して下さる川合さんの力添えあって、継続が困難と言われる途上国ビジネスも今日まで軌道に乗せることが出来ているのです。

Q. FAR EASTとの出逢いは?

A. アラビアの食と文化を日本へ輸入するプロジェクト

私は元々、政府関係機関でエジプトの中小企業の融資に関するコンサルティングを担当していました。

2010年に中小企業の輸出に関わる調整員で入った際に、湯沢元エルサルバドル大使と出逢い、彼の信念に深く共感し、一緒に仕事をさせて頂く中で、専門家派遣事業のスパイスの専門家としてエジプトに訪れていた佐々木さんをアテンドさせていただくことになったのが全ての始まりです。

当時、佐々木さんは政府主催のセミナーに講師として出席し、現地の貿易輸出機構や中小企業向けに「日本企業に参入するにはどうしたらいいか」ということを話されていました。

その時、FAR EASTは、日本の食文化にはまだ馴染の無いエジプトのスパイスの数々を輸入し、お洒落なステーショナリー感覚で格好良く楽しめるようなパッケージ商品作りに取り組んでいました。日本のハイエンドマーケットで、美しい繊細なパッケージでスパイスをブランディングするなんて、10年先のことをやっているなあ、と感動しましたね。今でこそ日本にもお洒落なスパイスはあるけれど、あの時代にスパイスを使ってそんな事をしている企業は有りませんから。

様々な専門家の方々の案件を担当しましたが、商品を形にしたのは後にも先にも佐々木さんだけです。

それぐらい、途上国で何かを一つの商品に仕上げ、販路に乗せるというのは凄まじく根気の要ること。

佐々木さんは政府の招聘だけでなく、その後も足繁くエジプトへ来てくれて、次々にビジネスを形にしていきましたね。社長と一緒に仕事させていただくことが面白くて、それからの縁でFAR EASTの商品の買い付けや商談に同行するようになったんです。

店舗を飾るメソポタミア紋様の真鍮は、エジプトの小さな町の工房で作られたもの。

国際的な取引の経験も無く、全員がアラビア語しか話せない町工場で、細部に至るまでの拘りやブランドが大切にしていることを伝えても、そもそもの価値観が違い過ぎてその重要性を理解して貰うことってなかなか難しいわけですね。佐々木さんのオーダー通りのものが完成するまでに何度も何度も対話が必要でした。

CARVAANを飾る繊細な装飾のランプは、湾岸地帯の5つ星ホテルを飾る女性作家のもの。

こちらは取引にも慣れていて返事だけは良いけど、約束の期日通りに全く仕上がってこない。 文化圏が違う相手との取引はいつもそんな調子です。文化の差異を埋めるための対話を企業の代弁者として進め、貿易が途絶えないように調整し続けることが私の役割です。

それから携わったFAR EASTの商品は、スィーワオアシスのミネラルウォーター、アレキサンドリアのオリーブ、アンティークのランプや器、レバノンのワインに食材、レストランで使うタジン鍋や食器類。主力商品のデーツは特に商品化まで苦労を費やした分、思い入れが深いですね。

そうそう、私が自分で会社を起業しようと思ったのは、燻っている私に佐々木さんが「自分で会社をやる方がずっと楽しいよ」と言った言葉がきっかけなんです。じゃあ自分の思う通りにやってみようと。本当にそれが理由です。

Q. FAR EASTと仕事をする面白さとは?

ビジネスが形になるまでやり遂げる根気強さ

ビジネスが必ず形になること、この一言ですね。他の人からすると、それ本当に出来るの?という事でもFAR EASTは必ず形にする。だから出逢った時から今に至るまで、佐々木さんが言い出したことを出来ないとは絶対思わないんですよね。絶対に出来るとしか思わない。

デーツを初めて輸入することになった時も、日本に輸出するための商談は相当苦戦しました。日本では何故ここまで厳しい衛生管理体制が必要なのか、という話し合いが全く進まなくて。

まず途上国の人達の立場からすると、なぜやるのかやらないのか分からない所の話ではなく、見たこともない高級市場の世界の話をされているから、同じ言語で話しているとは思えない位に幾ら言葉を尽くしても伝えるのが難しい。高級市場も分からなければブランディングの意味も分からない。そんな彼らに此方の厳しい要求を理解して貰わなきゃならないわけです。

商品クオリティーに対してもデザイン性に対しても、FAR EASTの要求はその中でも取り分け厳しいですよ。向こうからすれば考えられない位の厳しさですね。商品の劣化を防ぐためのバキュームシーラーに窒素ガス、脱酸素剤、一粒一粒を人の手で検品する体制なんて、エジプトの食品会社はまず備えてすらいないし、考えてすらいない。

その条件を揃えて貰うための交渉は数日に渡りました。理解して貰えるまでしつこく何度も言うものだから、終いには何を言っても飽和状態。ミリ単位の要求まで逐一する私達に「面倒臭えな、こいつら…」という顔を隠そうともしない。私達の要求がうるさ過ぎて工場ももう来るな、と出禁になりました。でも、分かって貰えないと交渉は終わらないですからね。翌日には懲りずにまた話をしに行きましたよ。私は佐々木さんの言葉と信念をそのまま伝えるだけです。

ブチ切れ寸前の緊迫感の中での交渉は大変だろう、って言われますが、佐々木さんは最初から最後まで絶対に大事にしているものを曲げないから私はやりやすいですね。先方の出方で弱腰になって軸がブレブレになってしまう事ほど交渉しにくいことはない。方向性も明確に決まっている、決断も速い。それがFAR EASTの強さです。やりたいことがはっきりしているから、私自身もそのプロジェクトの実現に向けてやるべきことが明確に分かるんです。

他の企業だったらとてもじゃないけど面倒臭くて時間の無駄だってとっくに見切りをつけているビジネスばっかりやってると思いますよ、FAR EASTは。でも、これこそがまだ可能性が未知数の国で挑戦する面白さだと思います。

Q. これからFAR EASTと共に挑戦したいことは?

A. 日本の食と文化をアラビア世界へ

今までFAR EASTと取り組んできたのは、アラビア世界の食と文化を日本へ輸入すること。今後は日本の食と文化をアラビアへ輸出することが楽しみですね。FAR EASTの文化の発信力を持って高品質な日本の食文化をアラビアに広めた時にどんな波及効果があるか、考えただけでワクワクします。私にはアイディアは無いけど、アイディアを持つ人同士を繋げる道筋を作ることは出来る。そのためには、佐々木さんと同じ熱さで同じ方向を向いてプロジェクトに関わる現地の人材を見つけ、同じ熱量を持って貰うように伝えてくことが私のミッションです。

取材:野中愛子・阿部香澄
筆:阿部香澄